21世紀、遺伝子の改変と機械と身体の結合によって、人類から進化した新たな生命体が誕生するのだろう。
今は人類史上の転換期どころではなく地球の生命史上の転換期ではないか。今ちょうど猿から人間になったときのように、人間から次の存在へと移行する過渡期に差し掛かったところ。今までも地球上の生物は単細胞生物から多細胞生物に至ったり魚類から両生類に至ったりしてきたのだから、それと同じことのように見えるかもしれないがそうではない。
なぜならそれは全て「自然に」起きた進化だからだ。しかし私たち人間は自ら生み出した技術によって自らを進歩させていくのである。そこがこれまでの進化とは大きく異なる点。今までの生物は自然な進化を遂げたが、ここから先は人工的な進化となる。だから今は、生命史上いまだかつてない転換期なのだ。
きっと生命が知的生命体にまで至ると、それ以上は自然な進化が難しくなるから必然的に知的生命体自身の生み出す技術によって自分たちを進化させていくことになるのだろう。宇宙のどこで生物が進化し知的生命体に至ったとしても、その後の進化は自分たちの技術により人工的に展開するのではないか。
いま地球の知的生命体は、機械と身体の結合により身体機能を拡張し、脳と人工知能の接続により知能を拡張し、そして遺伝子を自ら設計し意図した生物を誕生させることへと向かっているのだろう。それが人工的進化を経た、人類の次に来る存在であるのだろう。
なぜそう思うのかと言ったら、今、機械と身体の一体化や、人工知能、遺伝子工学、再生医療の技術の発展が目覚ましく、それらは全て人類の次の存在へと繋がるだろうから。今まさに、自然な進化から人工的な進化へとシフトし始めているのである。
よく語られる人間の定義のなかに、人間は「道具を使う」というのがあると思う。コンピュータを使ったり機械で身体の機能を補ったりするのは、その延長線上にあることだろう。
そこまでが人間だとすれば、その次に来る、人間から進化した存在の定義は「道具と一体化する」ということなのではないか。そしてその先には「自らが、自らの作った道具で出来ている」という状態があるのではないか。今ちょうど私たち人間は、「道具を使う」という存在から「道具と一体化する」「道具を内包する」という存在へと向かっている最中にあるだろう。
ある天体に生命が誕生した後、まず微生物から始まり、知的生命体のある地点まで至り、それ以上自然な進化が困難になると人工的な進化を遂げるようになり、その過渡期を経ると最終的に人工的な進化の先には、ロボットたちが自分たちを進化させたロボットを自ら誕生させることを繰り返してロボット自身が進化して行くという世界があるのではないかと思う。
なぜそのようなことが起きるのかと言ったら、それはこの宇宙がこの宇宙に誕生した何らかの存在によって理解される必要があるからなのだと私は思っている。そのためには宇宙を精密に探査できる技術と宇宙の仕組みを理解できるだけの知能を持つ存在が必要だろう。そのためにはそれだけのことができるロボットが必要なのではないか。そして完全に宇宙が理解されたとき、そこからまた宇宙は今までと違う新しい時代に入るのだろうと思っている。
だから知的生命体で自然な進化から人工的な進化にシフトするという過程も、いつか宇宙が理解され、宇宙全体が新しい時代を切り開くために必要だからそうなるような、必然的なことなのだと私は思っている。
因みに、なぜ私が「この宇宙に誕生した者によって宇宙が理解されたときに、この宇宙が次の段階に突入する」と思うのかと言えば、それは次の理由からだ。
私たち人間は、私たち自身を知ることで発展してきたように思う。私たちの身体の構造や脳の構造を理解することで、私たち自身を自分たちで拡張したり書き換えたりする技術さえ手に入れたのだから。まだまだ私たち自身について分かっていないことが多いけれど、それでもここまで自分たちの仕組みを理解したことで、私たちはもう生物として新しい段階に突入しようとしている。人間の歴史はある面で、自分たちが自分たちを知る歴史だったと言っても過言ではないように思う。その結果、これまでの進化とは違う進化を遂げることが可能となり、生命体の新しい歴史を切り開くこととなったのである。
そして、この宇宙には相似の構造がある。例えば、太陽のような恒星の周りを地球のような惑星が周り、更に地球の周りを月のような衛星が回るなど、同じ構造が小さなレベルにも大きなレベルにも存在する。あるいは星同士に引力が働いていると同時に、個々の星のまとまりである銀河全体も他の銀河と引き合ったりしている。あるいは、地球のなかで海を占める割合と私たちの身体のなかの水分の割合がだいたい同じだったり、人間の胎児が母体の胎内でこれまでの生物の進化の歴史を短い期間に追体験するような形で育っていくとか、そのように、大きな規模で起きていることの縮図が我々自身のなかでも起きていたりする。
だから、私たちに起きていることと同じことが宇宙でも起き得るのだろう。とすれば、我々が我々を理解したときに新しい段階へと移行するのと同じように、この宇宙がこの宇宙に存在する者によって理解されたとき、この宇宙は新しい段階の幕を開くのではないかと私は思っている。
地球の生命の歴史に於いては、知的生命体が自分たち自身について知ったときが一つの大きな転換点となり、宇宙規模では宇宙にいる何者かによって宇宙自体が知られたときが大きな転換点となり、それ以降は全く新しい時代に入るのではないか。
2017年12月/2018年1月 間アイ
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